ジェームズ・ボーエン著「ボブという名のストリート・キャット」(辰巳出版)

2018年5月25日

ジェームズ・ボーエン著「ボブという名のストリート・キャット」(辰巳出版)

streetcat
猫を題材にした小説は、概ね売れています。本作も、ボブという猫とストリート・ミュージシャンの青年の物語です。実話だそうで、映画化にもなり、昨年公開されています。

書き出しは、こんな感じ。すごく読みやすい文章です。

【どこかで読んだ有名な言葉にこういうものがある。われわれすべての人間は、毎日のようにセカンドチャンスを与えられている。なのに、目の前にぶらさがっているものをみすみす逃している、と。
 もちろん、ぼくも例外ではなかった。それこそときには毎日のように、多くの機会を与えられてきた。ずいぶん長いあいだつかみそこなってきたが、二〇〇七年の早春、何かが変わりはじめた。その春、ぼくはボブと友だちになったのだ。あのころを振り返ると、あれはボブにとってもセカンドチャンスだったのだという気がする。
 ぼくがボブと出会ったのは、どんよりと曇った三月のとある木曜日の夜だった。】

著者のジェームズは、1979年イギリス南東部に生まれ、幼少期にオーストラリアに移住。1997年、プロのミュージシャンを志しイギリスに戻るが、様々な困難に遭い、路上生活者となる。バスキング(路上演奏)で生計を立てていた2007年春、生涯の相棒、野良猫のボブと出会う。(解説から抜粋)

政府にホームレス認定されたジェームズが一匹の野良猫ボブ(茶トラ)と出会い、人生の困難を乗り越えていくノンフィクションストーリーです。日本と違って、ホームレス認定されていても、住まいがあります。そこでボブと一緒に暮らし、路上演奏にも同行させ、ボブのお陰でたちまち人気者になっていく。ざっとそんな話でしょうか。なんと言っても表紙のボブがかわいい。そして賢そうですね。

幸福な話だけでなく、辛い体験のエピソードも散りばめられていて、決して微笑ましいだけの物語ではありません。作者ジェームズは、かつてヘロイン中毒だったようで、薬物依存症更生プログラムを行っていました。そんな時にボブと出会い、ボブによって、ジェームズは立ち直っていくのです。

筆者も、野良猫だった三毛猫のメスを一匹飼っています。野良猫だったけど、去勢手術も受けていました。とんでもなく、寂しがり屋の猫ですが、日々癒されています。

ところで、本書は小説ではないので、少し素人っぽい文章で淡々とボブと主人公の日常が描かれています。逆に言うと、ドラマティックな要素が薄いとも言えます(映像になると、もっとおもしろいかも。映画は観てませんが)。

それでも、この内容だと、確かに映画化にもなるなあ、本も売れるよなあ、と思いましたね。

あとがきの「謝辞」のところで、作者はこう締めくくっています。

【最後に大切なことを言い残したが、もちろん、二〇〇七年にぼくの人生に現われ、会った瞬間から友情が芽生えた、小さな仲間にも感謝を捧げたい。彼はぼくのなかに積極的に人生を変える力があることを証明してくれた。すべての人にボブのような友だちが必要だと思う。そのような友を持つことができ、ぼくは本当に幸せ者だ。】

(北代靖典)

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