ピエール・ルメートル著、橘明美訳「その女アレックス」(文春文庫)

2015年7月2日

44d7b236-s 本屋でふと見かけて購入した文庫本です。「週刊文春ミステリーベスト10」、「このミステリーがすごい!第1位」、「30万部突破!」そんな惹句に魅か れて思わず手に取り、「訳者あとがき」を立ち読みしたうえで、そのままレジへ。ピエール・ルメートル著『その女アレックス』(文春文庫)—。

おまえが死ぬのを見たい——男はそう言って女を監禁した。檻に幽閉され、衰弱した女は死を目前に脱出を図るが……。
ここまでは序章にすぎない。孤独な女の壮絶な秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、慟哭と驚愕へと突進するのだ。(文庫本解説から)

これは話題のミステリーで、「英国推理作家協会インターナショナル・ダガー賞」や、フランスの「リーブル・ド・ポッシュ読書賞」など、日本国内、海外も含め史上初の6冠だと宣伝している。実際、読み終えての感想だけど、圧倒的なパワーを見せつけられました。

訳者はあとがきでこう語っている。
「この作品を読み終えた人々は、プロットについて語る際に作品以上に慎重になる。それはネタバレを恐れてというよりも、自分が何かこれまでとは違う読書体験をしたと感じ、その体験の機会を他の読者から奪ってはならないと思うからのようだ」

あるいはまた、著名なオット・ペンズラーはこう語っている。
「私 たちがサスペンス小説について知っていると思っていたことのすべてをひっくり返す。これは、近年でもっとも独創的な犯罪小説で、巧みな離れわざに私は繰り 返し翻弄された。次に何が起ころうとしているのかやっと理解できた、と思ったとたん、足をすくわれるということが二度も三度もあった」

主人公はアレックスという女性です。ただ、ある男がアレックスを誘拐し、監禁し、木の檻に閉じ込める。途中までアレックスがどういう人物なのか、さらに男 が何者なのか、まったく明かされない。アレックスの視点と警察(刑事)の視点が切りかわる形で、物語が進み、しかもテンポが速いので、本当に読みやすい。
外国の小説というのは、主人公の名前やら土地の名前やら、家族構成やらが複雑で、なかなか頭に入ってこないものですが(特に当方なんかはそうです)、この小説は分かりやすく、感情移入しやすい。

訳者あとがきから、もう少し詳しくストーリーを紹介しておこう。
〈あ る晩、パリの路上で若い女(アレックス)が誘拐された。目撃者の通報を受けて警察が捜査に乗り出すが、被害者の行方はもちろんのこと、身元も、誘拐犯の正 体も、誘拐の目的もわからない。その後、地道な捜査と思いがけない展開を経て、誘拐事件の謎のベールは少しずつ剥がれていくが、そのときはすでに捜査の焦 点も「その女を救えるか?」から「その女は何物なのか?」へ変わっていた。〉

ネタバラシは避けるけれど、物語には連続殺人事件も絡む。その殺害方法には必ず“硫酸”が使われており、殺された男性の口に硫酸が流されていたりと、極めて残酷なのです。なぜ硫酸が執拗に使われているのか?その謎もやがて解ける。

この作品は、ミステリー小説を書きたい人には、絶対にお薦めだと思う。だって、誘拐した犯人は途中で死亡し、さらに主人公のアレックスも、後半で死んでしまうのですから。
「え?死んじゃうのか?」って。
でも、死んだあとにも、物語がたっぷりと続くので、「なるほど、そうだったのか!」と納得できちゃいますね。

(北代靖典)

 

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