今村昌弘著『屍人荘の殺人』(東京創元社)

2018年4月18日

今村昌弘著『屍人荘の殺人』(東京創元社)

屍人荘の殺人
本屋で平積みになっていて、随分と目立っていたので、思わず手に取りました。今村昌弘著『屍人荘の殺人』(東京創元社)です。第27回鮎川哲也賞受賞作。21世紀最高の大型新人による、前代未聞のクローズド・サークル。「デビュー作にして前代未聞の3冠!『このミステリーがすごい!2018年版』第1位、『週刊文春』ミステリーベスト第1位、『2018本格ミステリ・ベスト10』第1位だそうです。すでに15万部突破!

これはぜひ読んでみたいと思い、購入しました。

単行本の解説からの抜粋ですが――

神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、曰くつきの映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。
合宿一日目の夜、映研のメンバーたちは肝試しに出かけるが、想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。
緊張と混乱の一夜が明け――。部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。しかしそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった……!!
究極の絶望の淵で、葉村は、明智は、そして比留子は、生き残り謎を解き明かせるか?!
奇想と本格ミステリが見事に融合する選考委員大絶賛の第27回鮎川哲也賞受賞作!

第一章の書き出しはこんな感じ。

「カレーうどんは、本格推理ではありません」
 俺はそう告げた。
 当然カレーうどんはうどんの亜種であって本格推理どころか本格中華ですらない。そんなことはわかっている。俺が言いたいのは、ここでカレーうどんの名を出すのは非論理的ということだ。
「それは宣戦布告と受け取ってもよいのだろうね」
 定規のようにまっすぐ背筋を伸ばした男がこちらを睥睨する。細い瞳がリムレス眼鏡の奥でかかってこいといわんばかりに光っている。

文章はうまいですね。随分と読みやすいです。

ネタバレですが、この小説、ゾンビが出てきます(ネットに読者の感想が出回っているので、明かしてもいいでしょう)。最初、なんだァ、ゾンビかあ、と思っちゃいましたね。

本文から切り取って紹介すると――

「あんた、見捨てて来たのか!」
「どうにもならねえよ! 見たかあいつら。人を喰うんだぞ! 下松を捕まえるなり一斉に襲いかかったんだ! 俺まで喰われろってのか!」
「ゾンビだ」あの姿を目撃している重元が呟いた。「実在したんだ。でもどうして」
 その時、名張とともに菅野が玄関から出てきた。手には一本の槍。おそらく二階のラウンジに展示されていたものだ。

それにしても、ゾンビがぞろぞろと……。

単行本の最後に、加納朋子、北村薫、辻真先の選考委員三氏の「選評」が載っています。三氏とも、最終候補作六編のなかでこの作品を押し、全員一致で本作が受賞となったと明かしています。

冒頭にあるホテルの見取り図だの、大学のミステリ愛好会だの、ホラービデオの撮影の為の合宿だの、まさに古典的かつ王道! という感じで微笑ましく読んでいたら……。いきなり大量の〇〇〇にホテルが取り囲まれて、通信も途絶え、あっという間のクローズドサークルの完成。しかも探偵役と思われた登場人物は……。
いやはや、斬新というか奇抜というか、あまりの展開に呆然としてしまいました。しかもそこから始まる連続殺人事件が、この特殊で異常な設定ありきで、最後にはとてもきれいに謎解きされていく……。
一言で言って、抜群に面白かったです。(以下略)」
これは加納朋子氏の選評です。

当方もおもしろいと思いました。残念ながら本格推理に馴染みが薄いため、最初はちょっと戸惑いましたけど。

また、どんな作者なのか、投稿生活のことが書かれてあったので、一部ご紹介します。

──ぎりぎりじゃないですか! 投稿生活はどんな感じだったんですか。

今村……とにかく最初は本を読まなきゃ駄目だろうと思って、一ヶ月ぐらいがんばって一日に三冊読みました。あとはとにかく毎日書き続けて、二〇一六年にようやくショートショート大賞とミステリーズ!新人賞で最終選考まで残ったんです。ただ、ミステリーズ!新人賞落選がわかった八月にふと気づいたんですね。これから何かの賞に応募したとして、結果が出るまで半年はかかる。ということは、翌年十一月の期限までにデビューするためには、五月ぐらいまでには何かに応募していなくちゃいけない、と。それで急いで調べたら、次に〆切が来るのが十月末の鮎川哲也賞だとわかりました。ミステリーズ!新人賞で最終まで残していただいたんで、東京創元社とは波長が合うんだろうと決めて、そこから二ヶ月半で書いたのがこの『屍人荘の殺人』です。その時点で手持ちのアイデアはまるで無し。「そもそも本格ミステリーって何?」というところから勉強して「つまり『金田一少年の事件簿』なんだ。要するに一人の犯人が特定できればいいのね」と納得しました。

(小説丸から)

投稿前に、一日に3冊本を読んでいたということです。しかも、2カ月半で書き上げたとは……凄いです!

物語の発想は確かに斬新。正直、当方も唖然としました。それでも、最後にはうまく纏まっています。次回作はどんな作品になるのだろう。そういう意味でも注目でしょう。
(北代靖典)

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