内藤了著「ON 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」(角川ホラー文庫) –2015/11/30 8版発行

2016年4月11日

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新人賞受賞作はできる限り読んだ方がいいので、今回は「日本ホラー小説大賞読者賞」を受賞した作品を読んでみました。一読して思ったのは、これって、ホラーか?という疑問。ぜんぜん怖くないし、ホラー要素が極めて弱い。ライトなホラー小説と言っていいでしょう。
解説にはこうあります。

【奇妙で凄惨な自死事件が続いた。被害者たちは、かつて自分が行った殺人と同じ手口で命を絶っていく。誰かが彼らを遠隔操作して、自殺に見せかけて殺しているのか? 新人刑事の藤堂比奈子らは事件を追うが、捜査の途中でなぜか自死事件の画像がネットに流出してしまう。やがて浮かび上がる未解決の幼女惨殺事件。いったい犯人の目的は? 第21回日本ホラー小説大賞読者賞に輝く新しいタイプのホラーミステリ!】

それにしても、この作者は文章が上手い。年齢は紹介されていませんが、かなり手慣れた書き手で、充分にプロレベルの凝った文章です。これだけ書ければ申し分ないでしょう。
新人賞応募作で最も重要なのはなんでしょうか。

構成力か。
文章力か。
キャラクターの造形力か。
はたまた奇抜なアイデアか。

いずれも大事な要素ではありますが、最も重要なのは実は文章力なんですね(これは当方の小説の師匠も言っています)。
物語の始まりの文章はこんな感じです。

かすれた灯りが揺れる六畳間には、壁にも、窓にも、立てかけられた畳にも、赤黒い花が散っていた。幼稚園児くらいだろうか、女の子の幼気な体がひとつ、畳を剥いだ床板の上に仰向けで寝かされており、両手のひらと膝を立てた両足が、釘で直接床に打ち付けられていた。女の子はたぶん裸で、ロウのように真っ白で、首から下腹部にかけて黒々と花が増殖し、何がどうなっているのかわからなかったが、死んでいることだけは間違いなかった。(以下略)

ただ、物語は既視感があったり、最後も驚くほどの結末ではありません。だから「読者賞」になったんでしょうか。

しかし、主人公のキャラはおもしろい(他のキャラも)。猟奇犯罪捜査班の新人刑事ですが、コンピューターのような頭脳を持ち、蓄積された膨大なデータを瞬時に引き出せるのが彼女の最大の武器です。ただ、決してメンタルが強いわけではなく、むしろ弱く、ほんとに新米の刑事として描かれています。あと、唐辛子を常に持ち歩いていて、ココアに振りかけて飲むんですね。いや~、ユニークです。

このキャラを創り上げただけでも、評価に値し、売れる要素が十分にあると思いました。その証拠に、本作はシリーズ化され、続編がすでに何作か出ています。
まだ読んでいませんが、角川書店は商売がうまいなあ、なんて思っちゃいました。
きっと主人公は修羅場を経験し、成長していくのでしょう。そんな楽しみもありますね。

このところ、猟奇事件を扱ったミステリー小説が人気のようですが、本作もそんな一編で、表紙もちょっとそそられます。

(北代靖典)

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