福田和也著「作家の値うち」(飛鳥新社)

2016年5月25日

book-review_fukuda2000年に発売された本だから、随分と古いけど、最近もう一度読んでみました。発売当時、「これはとんでもない本が出た」などと言われたものです。というのも、作家の作品を100点満点で採点しているのです。

こんな本は前代未聞だけれども、様々な作家の作品について、自分はおもしろいと思ったけど、別の人は「つまらなかった」と言うし、また別の人は「まあまあだ」と言うし、ブックレビューなどでも賛否両論あったりします。果たしてその作品の評価はどうなのか。本書はかなり、というか、極めて参考になるでしょう。

本書の「はじめに」に、こう書かれています。
【本書は、エンターテインメントと純文学双方の現役主要作家の、主要作品すべてについて100点満点で採点した、究極かつ前代未聞のブック・ガイドである。
 文学作品を、「点数」で序列化する。
 それが異例であるのみならず、きわめて野蛮な行為だ、という批判は甘受する。
 にもかかわらず、このような形をとらなければならない、つまりこうした形の包括的かつ単純明快な「評価」を提示しなければ、批評家としての責任を果たせない、という切迫感の下でこのような著作を世に問うことにした。】

点数評価は以下。

  • 90点以上 世界文学の水準で読み得る作品。
  • 80点以上 近代日本文学の歴史に銘記されるべき作品。
  • 70点以上 現在の文学として優れた作品。
  • 60点以上 再読に値する作品。
  • 50点以上 読む価値がある作品。
  • 40点以上 何とか小説になっている作品。
  • 39点以下 人に読ませる水準に達していない作品。
  • 29点以下 人前で読むと恥しい作品。もしも読んでいたら秘密にした方がいい。

本書に取り上げられている作品は、総数574点(現役作家限定です)。

作家の値うちは何で決まるか。
これについて、作者はこのように書いています。

【作家の値うちは何できまるか。その問いにはいくつかの答えがあるだろう。出版社にとっては、「売れる」ということは大事なことに違いない。文化人・知識人として作家を遇するメディアにとっては、「知名度」が大事だろう。一般の、さして文学に関心などない読者にとっては、とにかく「面白い」ことが大事であるかもしれない。~~けれども、その値うちを、多少とも「長続きのするもの」として考えたらどうだろうか。つまり、ただ売れるのではなく、売れ続けること。一時有名なのではなく、長期間にわたって高名であること。~~要するに、読者の記憶に残る作品を残すことである。~~】

さて、採点です。
90点以上の作品は、20作品もない。

96点『仮往生伝試文』(古井由吉)
『ねじまき鳥クロニクル』(村上春樹)
『わが人生の時の時』(石原慎太郎)
93点『抱擁家族』(小島信夫)
92点『生ける屍の死』(山口雅也)
『楡家の人びと』(北杜夫)
91点『うるわしき日々』(小島信夫)
『火山島』(金石範)
『木の一族』(佐伯一麦)
『後日の話』(河野多恵子)
『さようなら、ギャングたち』(高橋源一郎)
『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』(村上春樹)
『哲学者の密室』(笠井潔)
『テニスボーイの憂鬱』(村上龍)

以下、いろんな作品が点数で評価されています。しかも、29点以下の作品も、たくさん紹介されています。「人前で読むと恥しい作品」には、『団欒』(乃南アサ)、『テロリストのパラソル』(藤原伊織)、『ジゴロ』(伊集院静)、『失楽園』(渡辺淳一)、『砂のクロニクル』(船戸与一)などなど。

う~~ん、29点以下の小説は、当方なんか、評判になったのでほとんど読んじゃってますけどおww

でもね、古井由吉は凄い作家だと思います。文体というか、文章が凄い。96点というのは納得ですし、村上龍の『テニスボーイの憂鬱』も、素晴らしい。『抱擁家族』も『ねじまき鳥クロニクル』も納得の採点でしょう。
あのピース又吉が好きな作家のリストに、古井由吉が入っているんですよね。90点以上の作品は、ぜひ読まないといけないなと(再読も含めて)、改めて思いました。

最近の作品についても、点数をつけて欲しいものです。

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