麻見和史著『石の繭 警視庁殺人分析班』(講談社文庫)

2017年3月20日

book-review_ishinoモルタルで石像のごとく固められた変死体が発見された。翌朝、愛宕署特捜本部に入った犯人からの電話。なぜか交渉相手に選ばれたのは、新人刑事の如月塔子だった。自らヒントを提示しながら頭脳戦を仕掛ける知能犯。そして警察を愚弄するかのように第二の事件が――緻密な推理と捜査の迫力が光る傑作警察小説!(解説から)

主人公は「如月塔子」。26歳。警視庁捜査一課の刑事。新米女性刑事の成長物語です。
一体、どんなキャラか。

鏡に映った顔は、先輩たちに言われるとおり、童顔だった。おまけに彼女は身長が低い。警視庁の採用条件である「おおむね百五十四センチ以上」に満たない、百五十二・八センチしかなかった。それでいて名前が「塔子」とは、どういうことだろう。両親も小さいかというと、そうでもないのだ。父は百七十程度、母も百六十数センチはあった。
 塔子は、この身長と子供っぽい顔に不満を持っていた。刑事として手柄を立てたいと思っているのに、周囲からはいつも「女の子」扱いされてしまうからだ。(本文から)

如月塔子は十一係最年少、身長152・8センチの小柄な新米女性刑事。同じ捜査一課の刑事だった亡き父の形見の腕時計をはめ、凶悪事件に立ち向かっていく物語です。配属1年半の巡査部長という設定です。

新米女性刑事、父親も元刑事――。この設定は最近、極めて多くなっていますが、問題は新米女性刑事のキャラ立てで、これによって本が売れるか売れないか、ドラマ化や映画化されるか否かが決まると言っても過言ではないでしょう。刑事ものの小説で、最も映像化されているのは、「美しい女性刑事」です。当然、最初は新米ですからシリーズ化もしやすいわけで、刑事を主人公にしたミステリー小説を書くなら、この設定が狙い目でしょう。

物語は、死体発見から始まりますが、この死体がちょっと猟奇的です。
廃ビルで見つかった死体は、モルタルで肩から下を固められたあと、なぜか胸から腹にかけてモルタルを乱暴に剥がされた跡があり、しかも、男性の毒殺死体なのです。なんだ?となるわけですが、すぐに犯人の“トレミー”と名乗る男が、立ち上がった捜査本部に堂々と電話をかけてくるのです。その対話者に選ばれたのが主人公の塔子。冒頭からショッキングな展開で、読者に謎を提示し、緊迫した見せ場が続きます。この事件は父親がかかわったかつての事件ともつながり、物語は俄然、複雑になっていきます……。
ドラマ化されても不思議ではありません。欠点のない読みごたえのある警察小説でしょう。ただ、主人公の身長が……wwちなみに、主演の木村文乃は身長164センチだけどね。

他にも、女性刑事のシリーズものは枚挙にいとまなし。
誉田哲也著『ストロベリーナイト』(光文社)姫川玲子シリーズ。
吉川英梨著『通報者』(宝島社文庫):警視庁「女性犯罪」捜査班 警部補・原麻希シリーズ、第3弾。沢村鐵著『警視庁墨田署刑事課特命担当・一柳美結』シリーズ(中公文庫)。
内藤了著『ON 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』 (角川ホラー文庫)。同作品はブックレビューでも取り上げましたが。
講談社が主催の「第2回本格ミステリーベテラン新人発掘プロジェクト」受賞作の二上剛著『黒薔薇 刑事課強行犯係 神木恭子』(講談社ノベルス)なども。これもドラマ化!

個人的には篠原涼子主演『アンフェア』が好きですが。雪平夏見役。なんとも格好のいい女刑事で、ドラマも二転三転し、レベルの高い娯楽作品と言えるでしょう。

おそらく、今後も女性刑事ものは大量に出版されることでしょうね。
(北代靖典)

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