2016年5月21日
少し前に出版された新書ですが、今回、このコーナーで取り上げてみました。電子書籍が随分前から注目され、いろんな本が出ています。村上龍先生(当方が最も好きな作家ですが)も、電子書籍のジャンルに進出しましたが、果たして成功しているのかどうか、実際には何も知りませんが、最近はあまり噂にもなっていません。
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いったい、電子書籍はどうなのか。その未来は?
それを知りたい読者にはとても参考になる本です。
著者は、大学卒業後、光文社に入社。『女性自身』『カッパ・ブックス』編集部を経て、2002年、光文社ペーパーバックスを創刊し、編集長を務める。著書多数。そういう方です。
この本のなかで、最終的に何を言っているのか。
【私は2010年5月、34年間勤めた出版社を退社し、これまで培ってきた人脈をネットワーク化して電子出版のビジネスに手を染めてみた。そうしていま言えることは、「電子出版がつくる未来」は幻想にすぎず、既成メディアのクビを絞めるだけだと思うようになった。】
本書の内容は以下です。
- 第1章 「Kindle」「iPad」ショック
- 第2章 異常な電子書籍ブーム
- 第3章 そもそも電子書籍とはなにか?
- 第4章 岐路に立つ出版界
- 第5章 「中抜き」と「価格決定権」
- 第6章 日本市場の特殊性
- 第7章 「自炊」と不法コピー
- 第8章 著作権の呪縛
- 第9章 ビジネスとしての電子出版
- 第10章 「誰でも自費出版」の衆愚
- 第11章 コンテンツ産業がたどった道
いくつか気になることが書かれていて、それを列記してみました。
・活字離れなど起こっていない。起こっているのは「紙離れ」だけだ。
・こうした子供たち(今の子供たちのこと)、つまりデジタルネイティブ(生まれたときからデジタルに接して育つ世代)が、大人になったときは、もはや紙でニュースや情報を得る習慣はなくなっているだろう。
・電子雑誌販売サイト「ビューン」の惨敗
「じつは無料のときは12万人までいったんです。ところが、有料になったら1万人以下まで落ちてしまった」
・私の経験から言うと、作家志望のほとんどが実際には印税や名声を望んでいるだけである。社会に伝えたい明確なメッセージや思想を持っていないし、それを裏付ける経験もない。
他にもいろんな興味深いことが書かれています。個人的には反論もあるんだけど、確かに「禁断の書」かもしれません。
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