矢月秀作著「もぐら」(中公文庫)-初版発行日2012/4/25

2016年1月11日

book-review_mogura最近、どうしても読んでみたいな、と思っていた本です。新刊を買わなくても、アマゾンでも、古本屋でも売っています。で、先日、古本屋で見つけて購入し、一気読みしました。「もぐら」シリーズの第一巻です。シリーズ本が何冊も出ているし、それだけ人気のようですが、やはり一巻から読まないとね。

【かつて警視庁組織犯罪対策部に属していた影野竜司。彼はある事件で相棒と愛する妻、娘を失い表社会から姿を消した——。十年後、竜司は闇社会で“もぐら”と恐れられるようになる。警察には相談できぬ事件を請け負い、暴力を厭わず、超法規的に過激な手段で解決するトラブルシューターとして。悪を憎む孤独なヒーロー、ここに誕生!】
(解説文から)

主人公の刑事が妻や娘を殺され、復讐に立ち上がる物語は、多々あります。映画でも、そういう設定のものは多くあると思う。当方が好きなチャールズ・ブロンソン主演の『ロサンゼルス』(1982年)は、娘を強姦された父親が犯人を自力で探し出して復讐するというアクション映画でした。他にもいっぱいありますよね。そういう意味で言うと、主人公の設定はとくに目新しいわけではない。なのに、この作品は最後まで一気に読めてしまう。
なぜか?

(1)物語のテンポが速い。
(2)文体が簡潔で、ハードボイルドに徹している。
(3)登場人物のそれぞれのキャラがおもしろい。
(4)とにかく、スピーディー。
(5)話の展開の先が読めない、物語が停滞していない。
(6)たくさん人が死ぬ、たくさんの戦いがある。
(7)エロス的な要素もしっかり盛り込まれている。

思いつくままに列記しましたが、(1)〜(5)はエンタメには必要な要素ですね。(6)と(7)はこの作品ならでは。ぴたりとハマっています。そしてこの小説の魅力は、なんと言っても主人公のもぐらでしょう。正義感が強くて、そしてやたらと強い。まあ、ユニークなのは、何人も悪人を殺しちゃうところですけど。

物語は東京の渋谷を舞台に展開し、覚せい剤のシマ争いです。そこに竜司が挑む。初めは刑事として登場しますが、解説文にあるように、トラブルに巻き込まれて愛する妻、娘を失う。それから刑事を辞め、闇社会で生きていくわけです。そして向かうところ敵なしの強さで最後まで突っ走る。いやはや、痛快。でも、ラストにはちょっと驚いた。渋谷を仕切ろうとする組織の黒幕は果たして誰か?これが意外で、さすが構成力は抜群だね。ワクワクしながら、一気読みできます。

当然ながら、最後は主人公はかつての仲間たちに逮捕され、懲役十五年の実刑判決を受ける(人を殺しちゃってますからね)。
え? じゃあ続編はどうなるわけ?刑務所の話か?
これがなんと、続編は刑務所が爆破されるのです。で、超法規的な理由で、もぐらがムショから出てくるのです(まだ読んでませんが、絶対に読みたいですね)。結局、作家が売れるためには、他の作品もぜひ読んでみたいと思わせないといけないということです。
純文学でも、それは同じですよ。

[amazonjs asin=”4122056268″ locale=”JP” title=”もぐら (中公文庫)”]

お問い合わせ

お問い合わせ