又吉直樹著「夜を乗り越える」(小学館新書)

2016年6月22日

book-review_matayoshi小説を読み、小説に救われ、そして夜を乗り越えてきた又吉直樹の「読書のすすめ」本です。新刊ですが、よく売れているようです。

なぜ本を読むのか。なぜ文章を書くのか。芥川賞受賞作の「火花」はどのようにして生まれたのか。なぜ太宰治が好きなのか。幼少のころまでさかのぼり、自身の文学体験を語りつくした本です。エッセイですので、簡単に読めますし、これを読むと、無性に小説が読みたくなりますよ。

本の解説文にはこうあります。

【芸人で、芥川賞作家の又吉直樹が、少年期からこれまで読んできた数々の小説を通して、「なぜ本を読むのか」「文学の何がおもしろいのか」「人間とは何か」を考える。また、大ベストセラーとなった芥川賞受賞作『火花』の創作秘話を初公開するとともに、自らの著作についてそれぞれの想いを明かしていく。「負のキャラクター」を演じ続けていた少年が、文学に出会い、助けられ、いかに様々な夜を乗り越え生きてきたかを顧みる、著者初の新書。】

章立ては以下。

  • 第1章 文学との出会い
  • 第2章 創作について―『火花』まで
  • 第3章 なぜ本を読むのか―本の魅力
  • 第4章 僕と太宰治
  • 第5章 なぜ近代文学を読むのか―答えは自分の中にしかない
  • 第6章 なぜ現代文学を読むのか―夜を乗り越える

又吉は何度も繰り返し、本を読んでいますが、その理由も書かれています。
太宰治の『人間失格』については、こんな感じです。

【本の内容は変わりませんが、人間は日々、年を取りながら変わっていきます。
中学二年の時、僕は太宰の『人間失格』を読みました。次に読んだ時は高校生だったと思いますが、「なんかおもしろくなっている」と思いました。初めて読んだ時よりも物語の輪郭がはっきりわかりました。
その後上京し、縁起担ぎで毎年一冊目は『人間失格』と決めて読んでいました。そうすると毎年おもしろくなっていることに気がつきました。】

また、特別に思い入れのある作家の作品も紹介しています。
遠藤周作『沈黙』、古井由吉『香子』、町田康『告白』、西加奈子『サラバ!』、中村文則『銃』などです。凄い小説ばかりです。う~ん、また読みたくなっちゃいましたね。

以前、芥川賞受賞前に、ある京都のイベントでピース又吉さんを取材したことがありました。その時、読まれている本のリストが紹介され、それを見たとたんに、「この人は単に芸人がモノを書いているのではない。本物だ」と思いました。そのあと、芥川賞の受賞となったんですが…。

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読書好き、これから読書好きになるかもしれない人はぜひ。単純におもしろいです。

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