1週間でマスター 小説を書くための基礎メソッド 初級編

2021年8月1日

『1週間でマスター 小説を書くための基礎メソッド 初級編』(雷鳥社)
著・奈良裕明/監修・編集の学校

基礎メゾット初級編
文章読本やら小説の書き方講座やら、さまざまな本が出回っています。小説創作において、参考になるものもあれば、あまり役にたたないものもありますね。これまで100冊以上は読んだ気がしますが、そのなかで、役立つと思われる本をいくつかを紹介していきたいと思います。

世の中には小説を書きたい人が溢れています。コロナ禍において、書き手も増えたかも知れません(たぶん)。本を読むばかりではつまらない。やはり自分でも書いてみてはどうでしょう。いや、あなたはすでに何作も書いているかもしれませんが。

今回取り上げるのは、『小説を書くための基礎メソッド 初級編』です。本の帯には、こうあります。

1週間でここまでできる!
「編集の学校」で好評の授業が本になりました。
小説を書くための基礎技術を毎日無理なく学べる。
はじめて小説を書く人でも大丈夫。
書くことが好きな人に贈る、書くことが今よりもっと楽しくなる本。
あなたの小説がきっと本になる!

1週間の日程が記され、無理なく学べるようになっています。

第一日目。
何を書くか。

何が優れたテーマか。作者はこう言っています。

何が「優れたテーマ」で、何が「良い題材」なのか?
それは、アナタが今、
・最も関心のあること
・最も大切だと思っていること
・最も重要な問題だと感じていること

これこそが、優れたテーマであり、かつ良い題材なのです。

そうです。売れると思われるものや流行っているモノなど、それらに媚びて書いたところで優れた作品は生まれません。当たり前だけど。

第二日目。
どう書くか。文章のリズムなど。

これについては、作者はこう綴っています。

アナタには好きな文章、読んでいて心地良く感じる文章、上手だな・うまいなと思う文章、こんな文章が書けたらいいな・書きたいな、お手本・目標にしている文章、さらには「何度くり返し読んでも飽きないな。くり返して読みたくなるな、と思う文章」があるはずです。
それこそが、その文章が持っているリズムこそが、アナタにとっての良いリズムであり、良いリズムを持った文章なのです。

その文章と、アナタの体のリズムが合っているからだと、作者は言っています。同感です。
筆者にしても、本屋で買ったものの、読みづらくて10ページほどで投げ出してしまった書籍がたくさんあります。我慢して読むのは嫌いなので、別の本を読むようにしてます。確かに自分の身体に適合したリズムの本は多々あります。

第三日目。
構成について。初稿とは。

どのような物語にするか。アイデアを練る→取材・調査をする(資料を読む)→構成をたてる。

構成とは、いわゆる起承転結のことです。(プロットについては第五日目を読んでください)。

「書くとき主観。読み直すとき客観。」
第一稿を書いている時、初めにマス目を埋めている時は、どんどん文章の中に入っていってください。自分がその場に立っていたら、何が見えるか・聞こえるか・匂うか・味は?・空気の肌ざわりは?――常に五感を活用しながら一文字ずつ、一文ずつ書き進めていく。
「読み直すときは客観」――自分が書いた文章を、客観的な目で見て、書き直してほしいということです。

初稿は主観で一気に書き上げなければなりません。そうしないと、300枚や400枚の長編はなかなか筆が進みませんから。作者の言う通りでしょう。

語尾について。
現在形――~する。臨場感。
過去形――~した。基本
大過去――~だった。~だったのだ。

第四日目。
文章を直してみよう。
「推敲・リライト」について。

これは、自分が書いた文章を「他人の目」で読み直し、書き直すこと。つまり「客観」を発生させなければなりません。まあ、誰もが分かっていることです。

第五日目。
プロットを作ってみよう。

プロットとは「物語・ストーリーの前後関係・因果関係をはっきり示したもの」のことです。では、物語・ストーリーから、どのようにプロットへ発展させるのか。それには「ハコガキ作り」という作業を行います。

つまり箱の中に物語の場面ごとに整理し、記していくことです。

場所
時間
登場人物
出来事
主な台詞など、

これらを各シーンごとにまとめたもの。それがハコガキ。ハコガキを見れば、物語・ストーリーの全体をひと目で見渡すことができる。伏線、回収も入れる。そうやってプロットを完成させればよいのです。

第六日目。
どう書いていくか。
プロットを実作する。実際に小説として、ひとつひとつの文章を書いていく。もちろん書き方は自由です。

課外授業。
視点について。

視点とは「キャメラの位置」です。物語・お話を書き進めていくに当たり、書き手であるアナタはどこにキャメラを置くのか、どこにキャメラを据えてお話を語っていくのか――ということです。そして「視点」は「人称」と切り離せない関係にあります。

一人称の小説――私・僕・俺など
二人称の小説――あなた・キミなど
三人称の小説――彼・彼女・拓哉・恭子など

三人称の小説の二つの種類。
1・頭越しのキャメラ。ある特定の人物(主人公もしくは物語の観察者)の頭の真後ろにキャメラがあって、常にそこから見た目で、お話を進める。

2・離れたキャメラ
舞台と同じです。書き手は離れた客席の位置から登場人物を眺め、お話を進める。

最も注意しなければならないのは、ひとつの作品の中で、この二つを混ぜてはいけない!ということです。なぜ? 読み手が「絵」を作れないからです。

これはかなり重要なので、肝に銘じておきましょう!

第七日目。
作品を読んでみよう。
説明するな、描写せよ。
説明ばかりが続くと、読み手は飽きます。「描写」がないからです。
説明と「描写」の違いは?

彼は短気だ。――これが説明。
彼は舌打ちして、ケータイを放り投げた。――これが「描写」です。

描写は身体の動きや心の動きなどを伝えるもの。
「彼は、自転車で帰路についた。」
こう書けば、説明です。これを描写に変えると……。
「彼は自転車のペダルを勢いよく漕いだ。」とか。

説明と描写を混ぜ合わせることで、良い文章が生まれます。

以上が七日間の重要な講義になっています。

ただ、随分と短縮して紹介しました。全部で395ページのわりと厚みのある単行本ですので、じっくり読めばかなり参考になるでしょう。「初級編」のほかに、メソッド2「実践編」とメソッド3「未来への熱と力」があります。また、ご紹介します。

(まんじろう)

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